歌詞鑑賞 スピッツ / チェリー
昨日の夜、大学の友人と酒を飲みながらあれこれと話す。
その時に、俺がBUMP OF CHICKENのロストマンの歌詞は、
高村光太郎の道程に通じるものがあると主張。
高村光太郎の道程、という作品は、
私という現在があり、その私が未来という道なき道を切り開くことで、
私が歩いたあとにできる過去という道との途方もない道程を歌った詩である。
それがロストマンでは、現在の象徴である主人公は過去をロストすることで、
未来へと進み、現在と未来の関係だけを道だと捉えていた。
過去を捨て前に進む、しかし前とは未来の象徴、道なき道である。
振り替えろうにも過去はない。自分の現在地がわからない。コンパスは動かない。
しかしロストマンの主人公は過去をとりもどし、現在地を知る。
そうして高村光太郎の道程へと繋がっていく、という歌詞である。
言うなれば、道程への道程だったという訳だ。
と、そんな話をしていて面白いなぁと盛り上がっていた。
それで、他にも何か歌詞を読んでみようという話になって、
なぜかスピッツのチェリーを読んでみることに決まった。
「君を忘れない まがりくねった道をいく」
君を忘れない、という歌詞から「君」は過去の象徴であると読める。
まがりくねった道、とは定まりのない道のこと、
つまり現在から未来への道である、と読めないだろうか。
何行か進んで、
「二度と戻れない くすぐりあって転げた日
きっと想像した以上に騒がしい未来が僕を待ってる」
もうここまで読むと疑い様もなく、過去、現在、未来構造が浮き彫りとなってくる。
「二度と戻れない?」の部分はまさしく過去の象徴としての歌詞。
想像した以上に騒がしい未来は、そのもの未来。
僕とは過去から未来へ向かう、現在の象徴である。
さらに進んで
「どんなに歩いても たどりつけない
心の雪で濡れた頬
悪魔のフリして 切り裂いた歌を
春の風にまう花びらに変えて」
どんなに歩いても たどりつけない、という歌詞は、ゴールのない未来への道。
途方もない遠さのことを言っている。
「心の雪」とは、冬の象徴、覆い隠すものの象徴、冷えた心と言ってもいい。
しかし同時に雪とは、溶けるものの象徴でもある。
冷え切ったと思っていた心も、いつしか溶けて、雫となる。
雫が頬を濡らす、すなわち涙である。
過去(君)を凍らせて、その凍らせてしまった心を冷えきってしまったと感じていても、
いつしか雪はとけ、再び雫となり頬を濡らす。
このたった一行の中に、過去から現在への主人公の感情の動きが詰め込まれていて、
さらには、季節を時間の流れを表す分かり易い表現として使っている。
恐るべき作詞能力である。
そんな背景を持つからこそ、サビの「君を忘れない」という部分の説得力が倍増する。
単純な安っぽい文句ではなく、本気の言葉にする為の重要な流れだ。
悪魔のフリして、切り裂いた歌とは
そういった「君を忘れない」という、
凍らせてしまった過去への安っぽい文句を歌う自分の自己批判であろう。
まがりくねった道を越えて、現在に立っている自分は、
もう過去との因果は断ち切られてしまった存在であると、
チェリーの主人公は思ってしまったのかもしれない。
だからこそ「君を忘れない」というフレーズが彼にとって、
重みの無い言葉に化けてしまった。自分の歌を切り裂きたいほどに。
しかし、彼の中の雪はとけたのだ。過去を覆っていた雪は溶け、
「春の風に舞う花びらに」変わるのだ。
時間の流れの中で、未来で、過去に出会ったのだ。
現在に立つものの、途方もないもどかしさが、
辛さを知り、そして再び過去と現在と未来という因果関係を取り戻すことで、
その一連の流れの本当の深い意味を知ることとなる訳である。
そうした中で歌われる「君を忘れない」というフレーズはもはや、
安っぽい文句になど成るはずがない。
「いつかまたこの場所で 君とめぐり会いたい」
いつか(未来)また、この(現在としての自分)場所で、君(過去)とめぐり会いたい。
そうして過去と現在と未来のなかで、すでにこの主人公は何度も過去に会っている。
雪がとけ、春になる。
過去と未来を結ぶ現在に立ついつだってウブな自分の重要性は、この歌詞の中で浮き彫りになっている。
そのウブな主人公のことを、草野正宗は
俗的な言葉でチェリーと呼んでいるのかもしれない。
そして
その俗的なチェリーという呼称は、正確に言うならば「童貞」のことである。
これ即ち「道程」とも掛かっている言葉であると考えない訳にはいかなくなった訳だ。
深夜、ここまで考え至った時。
二人で発狂しそうなほど興奮を覚えた。
読み解けた自分たちの達成感とあわせて、
草野正宗の描く歌詞世界の奥深さとタイトルをつけるセンスの冴えにである。
この鑑賞が正しいとは思わないが、
この歌詞がもつ本質の一端は捉えることができたのではないかと考えている。
チェリー → 童貞 → どうてい → 道程
その時に、俺がBUMP OF CHICKENのロストマンの歌詞は、
高村光太郎の道程に通じるものがあると主張。
高村光太郎の道程、という作品は、
私という現在があり、その私が未来という道なき道を切り開くことで、
私が歩いたあとにできる過去という道との途方もない道程を歌った詩である。
それがロストマンでは、現在の象徴である主人公は過去をロストすることで、
未来へと進み、現在と未来の関係だけを道だと捉えていた。
過去を捨て前に進む、しかし前とは未来の象徴、道なき道である。
振り替えろうにも過去はない。自分の現在地がわからない。コンパスは動かない。
しかしロストマンの主人公は過去をとりもどし、現在地を知る。
そうして高村光太郎の道程へと繋がっていく、という歌詞である。
言うなれば、道程への道程だったという訳だ。
と、そんな話をしていて面白いなぁと盛り上がっていた。
それで、他にも何か歌詞を読んでみようという話になって、
なぜかスピッツのチェリーを読んでみることに決まった。
「君を忘れない まがりくねった道をいく」
君を忘れない、という歌詞から「君」は過去の象徴であると読める。
まがりくねった道、とは定まりのない道のこと、
つまり現在から未来への道である、と読めないだろうか。
何行か進んで、
「二度と戻れない くすぐりあって転げた日
きっと想像した以上に騒がしい未来が僕を待ってる」
もうここまで読むと疑い様もなく、過去、現在、未来構造が浮き彫りとなってくる。
「二度と戻れない?」の部分はまさしく過去の象徴としての歌詞。
想像した以上に騒がしい未来は、そのもの未来。
僕とは過去から未来へ向かう、現在の象徴である。
さらに進んで
「どんなに歩いても たどりつけない
心の雪で濡れた頬
悪魔のフリして 切り裂いた歌を
春の風にまう花びらに変えて」
どんなに歩いても たどりつけない、という歌詞は、ゴールのない未来への道。
途方もない遠さのことを言っている。
「心の雪」とは、冬の象徴、覆い隠すものの象徴、冷えた心と言ってもいい。
しかし同時に雪とは、溶けるものの象徴でもある。
冷え切ったと思っていた心も、いつしか溶けて、雫となる。
雫が頬を濡らす、すなわち涙である。
過去(君)を凍らせて、その凍らせてしまった心を冷えきってしまったと感じていても、
いつしか雪はとけ、再び雫となり頬を濡らす。
このたった一行の中に、過去から現在への主人公の感情の動きが詰め込まれていて、
さらには、季節を時間の流れを表す分かり易い表現として使っている。
恐るべき作詞能力である。
そんな背景を持つからこそ、サビの「君を忘れない」という部分の説得力が倍増する。
単純な安っぽい文句ではなく、本気の言葉にする為の重要な流れだ。
悪魔のフリして、切り裂いた歌とは
そういった「君を忘れない」という、
凍らせてしまった過去への安っぽい文句を歌う自分の自己批判であろう。
まがりくねった道を越えて、現在に立っている自分は、
もう過去との因果は断ち切られてしまった存在であると、
チェリーの主人公は思ってしまったのかもしれない。
だからこそ「君を忘れない」というフレーズが彼にとって、
重みの無い言葉に化けてしまった。自分の歌を切り裂きたいほどに。
しかし、彼の中の雪はとけたのだ。過去を覆っていた雪は溶け、
「春の風に舞う花びらに」変わるのだ。
時間の流れの中で、未来で、過去に出会ったのだ。
現在に立つものの、途方もないもどかしさが、
辛さを知り、そして再び過去と現在と未来という因果関係を取り戻すことで、
その一連の流れの本当の深い意味を知ることとなる訳である。
そうした中で歌われる「君を忘れない」というフレーズはもはや、
安っぽい文句になど成るはずがない。
「いつかまたこの場所で 君とめぐり会いたい」
いつか(未来)また、この(現在としての自分)場所で、君(過去)とめぐり会いたい。
そうして過去と現在と未来のなかで、すでにこの主人公は何度も過去に会っている。
雪がとけ、春になる。
過去と未来を結ぶ現在に立ついつだってウブな自分の重要性は、この歌詞の中で浮き彫りになっている。
そのウブな主人公のことを、草野正宗は
俗的な言葉でチェリーと呼んでいるのかもしれない。
そして
その俗的なチェリーという呼称は、正確に言うならば「童貞」のことである。
これ即ち「道程」とも掛かっている言葉であると考えない訳にはいかなくなった訳だ。
深夜、ここまで考え至った時。
二人で発狂しそうなほど興奮を覚えた。
読み解けた自分たちの達成感とあわせて、
草野正宗の描く歌詞世界の奥深さとタイトルをつけるセンスの冴えにである。
この鑑賞が正しいとは思わないが、
この歌詞がもつ本質の一端は捉えることができたのではないかと考えている。
チェリー → 童貞 → どうてい → 道程